営業「虎の巻66条」(入門編2)

営業「虎の巻66条」(入門編2)

これは、簡単そうで、意外と出来ない。

2、褒める

 前章で書いたように、興味を持って聞き手になる事が重要ですが、その時、相手の話を真剣に聞き、「褒める」が出来ると、より相手との距離を縮める事が出来る。ところが、日本人は、この「褒める」が、正直、上手くない。アメリカ人のように、GOO~、ナイス~と言った事を自然に心を込めて言えるようなると、相手は凄く心地よくなるのだが、これが簡単そうで、意外と出来ない。

以前、初めて会った人と名刺交換し、立ち話をしていると、「國武社長は素晴らしいですね」「さすがです」と言った褒め言葉を連発する人が居た。でも、何故か、心地よくない、誉められているはずなのに、嬉しくない。何故なら、その人は、私を褒めながら、キョロキョロと周りを見ている、誰かを探しているようだった。そう、心ここに有らずって感じで、私を褒めている訳です。

あなただったら嬉しいですか?口だけで褒められて、あなたの心に響きますか?響きませんよね。ドラマなんかで、大手企業の奥様方の集まりで、部長の奥様を褒めて持ち上げ点数を稼ごうとするシーンがありますが、あれと同じ、滑稽(こっけい)なだけで、心には響かない。要するに、本心ではなく、下心が有って褒めても、相手の心を掴む事は出来ない。

「人は誉めて伸ばす」よく聞く言葉です。これは、正しい。ところが、皆様の中には、部下を褒めてみたが、全然、響かない、伸びないって経験は有りませんか?

そうなんです、先程書いたように、「褒める」行為が日本人は上手くないんです。私も、色んな本で学び、褒めて部下を伸ばすそうと考え、それまでは、部下の悪い所ばかり指摘していたのを止めて、褒めてみた事が有ります。すると、その部下は、余程、居心地が悪かったのか、私に対し、「何処か、具合でも、悪いんじゃないですか?」と言った(笑)。その言葉に、褒めて伸ばすって嘘だと感じ、たった1日で褒めて伸ばす事を止めた。

それから、数年後、経済誌フォーチュンで、世界の女性経営者BEST100に選ばれた、人材派遣会社、テンプスタッフの篠原社長とお会いした時の事です。私が、どうしたら、篠原社長のような素晴らしい経営者になれるのか、教えて下さいと尋ねた事が有る。すると、篠原社長は、いきなり私を褒めた。「國武さんは、素晴らしい経営者ですよ、今のままで、十分、素晴らしい。」と社交辞令のような返答をされた。いやいや、何か具体的に、ノウハウでも、テクニックでも教えて下さいと言っても、素晴らしいしか言わないんです。

初めて会ったばかりなのに、何言ってるのだろう?と正直、思いました。ところがです、30分ぐらい会話したのですが、その間、素晴らしいしか言わないんです。すると、何か、私って素晴らしいんだと、自分の事を思えて、パワーが出て来た。次回会った時に、何で、初めて会った私を、あんなに褒めてくれたのですか?と尋ねると、本当に、そう思ったからよ、と言うのだ。

これが、褒めて伸ばすって事です。前記したように、私が部下を伸ばそうと褒めたのは、10悪い所が有るのに、無理して1つ褒めようとしたので、部下の心に響かにどころか、居心地が悪かった訳です。篠原社長は、本心で褒めてくれたから、私の心に響き、私のパワーになった訳です。

だから、皆様が、相手を褒める時、本心で褒める事が重要って事です。美味しいものを食べた時、この味付けが、どうのこうのと、説明されるより、美味いと一言で伝わりますよね、それと同じって事です。相手を褒める時、本心で心から褒めて下さい。

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営業「虎の巻66条」(入門編1)

営業「虎の巻66条」(入門編1)

これは、基礎中の基礎です。誰にでも出来る、でも、ほとんどの営業マンが出来ていない事です。

1、聞く

営業とは、商品を売り込むのではなく、自分自身を売れ、と、上司に言われた事のある人は、少なくないでしょう。

自分自身を売るとは、どう言う事か?

以前、ある会で、私の伝説塾(起業塾)の塾生が、会長を紹介して欲しいと言う、綺麗な女社長が居るのですが、と言うので、是非、是非と言うと、30代半ばの、キャリアウーマンって感じの女性を連れて来た。清潔感有り綺麗な方で、いかにも仕事が出来る、そんな印象を受けました。彼女から、名刺を頂き、私の名刺を渡すと同時に、マシンガンのように、彼女は、自分の仕事を売り込んで来た。デザイン会社の女社長のようで、色々な工事や、彼女自身が、設計した店の名前を、次々と言い、是非、一度、見積りさせて欲しいと言う。私が、じゃあ、同業ですね、と言うと、えっと言う顔をして私を見た。

私は、レジェンドグループ12社の代表ですが、その中に、不動産業が有り、紹介者は、私の事を、不動産屋の店舗を数店経営している社長と紹介したようだ。不動産業には、内装が付きものなので、この女社長は、私を紹介して欲しいと言ったようです。私のグループには、不動産以外に内装業も、設計もあり、名刺にも書いてあるので、彼女に、私の名刺を指差して、ほら同業でしょ?と言うと、その女社長は去って行った。

この女社長は、自分の仕事になる相手にしか興味が無いようだ。あなただったら、こんな相手と取引をしますか?自分の売り込みの事しか頭にない人、相手の名刺すら見ない人、少なくとも、私は、そんな相手とビジネスをする気はない。自分自身を売るって、マシンガンのように、自分の商品を売る事ではない。

自分自身を売る=あなたを気に入って頂く=コミュニケーションを取るって事です。

あなたが、どんなに素晴らしい商品を持っていたとしても、初めて会った相手に、ガンガン売り込んだら、売れるものも売れなくなる。相手が、初めから、あなたの商品に興味が有り、相手の方から、あなたを呼んで話を聞きたいと言うなら別です。そうでは無く、あなたの方からアプローチする場合です。

まずは、相手に、あなたの事を気に入って頂く事を考える、自分自身を売るって、そう言う事です。その為に、必要な事は、売り込みではない。相手の事を聞く事です。相手の話を聞く事です。人は、自分の話を聞いてくれる人に好感を持つ。相手が、しゃべれば、しゃべるだけ、あなたとの距離は縮まります。

私は、独立・起業者向けに、ブログを書いていて、そのブログを見て、生で熱い声を聞かせて頂きたいと営業マン達が、アポイントを取る為にメッセージを送ってくる。当時、ブログランキング1位になっていた私は、イメージを大切にしたいから、極力、会うようにしていた。30分の約束で会い、ほとんどは、30分ピッタリでお引き取り願った。しかし、1人だけ3時間位、話をした営業マンがいる。何故か?その日は、たまたま暇だったのか?そうじゃない、では、何故?

ほとんどの営業マンは、私の話を聞きたいと言いアポイントを取ったはずなのに、いきなり会社案内から始まり、商品説明を必死に行う。私の事など聞きはしないのに対し、3時間居た彼は、私に興味を持ち、真剣に、話を聞いてくれた。3時間の内、私が、2時間半以上話しただろう。彼は、保険の営業マンだったので、保険の契約もし、知人も紹介した。彼のブログを読むと人柄がよく出ている。http://ameblo.jp/aki-rom/

 

自分自身を売る=相手の話を、真剣に興味を持って聞く所から、始まる訳です。お客様との距離を縮めるのは、あなたの会社の知名度でも、商品でも無い、あなた自身が、どれ位、お客様に興味を持って聞き手になるかです。

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営業「虎の巻66条」(前書き)

私が不動産業に入り約30年が経ちます。

私は、16歳の時に、あるテレビ番組に出ていた社長に憧れ、私も、社長になると決めました。その為には、お金を貯めなければいけない。高校卒業後、求人誌を見て、業界でも一番給料の高い会社を選び面接に行きました。「就業時間は、朝8時半から夜23時半まで、休みは、月に一度有れば良い方、その代わり、月100万円以上稼ぐ事は出来る、それで良ければ来い。」当時、面接で言われたのは、これだけ、面接時間、数秒、私は、この会社に就職する事に決めた。 

入社して見ると、受話器を手に巻き付けられ、買う気の無い人に、数千万円もするマンションを買いませんかと電話する。いわゆる電話営業です。毎月20名前後の新入社員が入社し、毎月20名前後の社員が辞めて行く。離職率100%の会社です。イスも無く、立ったままで電話をする。同じ会社に居ても、周りは全て敵、月一度の営業発表会では、殴り合いのケンカも珍しくはなく、心を許せる仲間など居ない、一匹オオカミの営業マンの集団です。

私は、この会社で、1年以上働き、営業の基礎を学びました。同期入社も20名位いましたが、1週間後には、5,6人に迄、減り、1ヶ月後には、同期入社組みは、私1人になっていました。びっくりしたのが、昼休みに、昼食に行き、荷物を置いたまま帰って来ない同期社員が居たのですが、先輩社員も、管理職の方も、全然、気にせず、何事も無かったように、午後の電話営業が始まりました。

後から分かりましたが、この会社では、毎月、昼休みに逃げる社員が居て、驚くような事ではありませんでした。今じゃ考えられないですが、冒頭で書いたように、就業時間が、朝8時30分から、夜23時30分、昼休み30分、夕方の休憩15分、休みは月1日有れば良い方です。イスもなく、トイレに行く時は、受話器の根元から、コードを抜き、片手に受話器を持ったまま用を達する訳です。

売上の上がらない社員をゼロ社員と呼び、ゼロ社員は、空気吸うな~と言われたり、電話の相手が出なくて、無言の時間が、1分でも続くと、管理職の方が見張っていて、灰皿が飛んで来ます。夜23時を過ぎ、知らない方のお宅に電話を掛けると、何時だと思ってるのよ~と叱られるだけじゃなく、警察に通報する方も居ます。そんな事は、お構いなしで、私達社員に電話させ続ける、今は、東京都からの指導も有り、電話営業への規制も強くなり、そんな強烈な電話営業をしている会社は無いはずです。

私を巣立ててくれた、この会社も、当時は、不動産業界の『虎の穴』と言われていましたが、今では、自社ブランドを分譲する迄になり、数年前に行ってみたら、イスに座り、のんびり電話営業をしていました。

今でも、忘れる事のない思い出が山ほどありますが、そのひとつ、夕方、カップラーメンにお湯を入れて、3分待っていたら、たまたま社長が営業部に来て、「何やってるんだ、國武~」と言うので、3分待っていますと言うと、「さっさっと食え~」と言われ、堅いままのカップラーメンを食べた事が有る。これが、意外と歯ごたえが有り美味かった。

この会社が、私の営業の基礎を作ってくれました。

 

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